教材研究のポイント② 本時の内容項目を理解する

 道徳科の教材研究をするうえで、本時の中心となる内容項目と、そこに含まれる道徳的価値についての理解を深めることは、必須条件です。


 ところで、内容項目と道徳的価値とのちがいについて考えたことはあるでしょうか。『学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』では、内容項目は、「児童が人間として他者とよりよく生きていく上で学ぶことが必要と考えられる道徳的価値を含む内容を、短い文章で平易に表現したもの」とされ、道徳科の学習で扱う内容を示した項目のことをいいます。つまり内容項目は、その内容にかかわる様々な道徳的諸価値を包含したものなのです。

例えば内容項目「感謝」は、「感謝」、「尊敬」、「報恩」といった道徳的諸価値によって構成されています。また、道徳的価値に関わる対象も「家族」、「高齢者」、「過去からの多くの人々」といった広がりをもって規定されています。そして、これらの道徳的諸価値の側面は、発達段階に応じて提示されています。学年が上がるにつれ、道徳的価値についての見方が深まったり広がったりするのは、このためです。

 この指標における最初のレベルは「中心となる道徳的価値を的確にとらえる」ことです。内容項目には、「正直、誠実」や「節度、節制」など、内容を端的に表す言葉を付記したものが見出しとして記述されています。そのため、見出しを読んだだけで内容項目を把握した気分になってしまいがちです。しかし、内容項目に含まれる道徳的価値は、低・中・高学年によって異なるのですから、学年に応じてどこまでをねらいにし、どのような学習を構想するかということは、学習指導要領もしくは解説編を読まなければ、簡単にはわからないのです。

 

それぞれの学年に求められる内容や道徳的価値を確認したうえで、そこに含まれるいくつかの道徳的諸価値から内容項目を多面的に見ることが、レベルアップのポイントとなります。教材の中心をなす道徳的価値について、内容項目に含まれる多面的な側面から、本時の学習で求めたい見方や考え方を見つめることで、道徳科の授業力の高まりが期待できます。

 ここで求められるのは、ひとつの内容項目を、低学年・中学年・高学年・中学校という具合に縦に見ることです。そのうえで、外してはならないポイントを確実に見出せば、子どもたちがどの側面から中心となる道徳的価値に迫ろうとしているのかを明らかにすることができます。内容項目の中での道徳的価値の深まりを、階層的に見ることが、子どもたちの多面的思考を学習の中で保障することにつながります。

 

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