道徳科の評価軸 私案

お久しぶりでございます。論文を書いて、シンポジウムに登壇して、また論文を書いて、ラウンドテーブルをコーディネートして......本務以外にあれこれとやるべきことがあって、このブログを完全に店晒し状態にしておりました。ただ、全く意外なところから、このブログを授業づくり等に活用していただいているとの話をいただき、細やかながらも更新せねばとの思いに駆られております。

とはいえ、これからもさほど更新頻度が上がらないですし、かなりマニアックな話ばかりになろうかと思いますが、ご容赦ください。

 

さて、今回のテーマは道徳科の評価についてです。

道徳が教科化され既に小学校では5年が経過し、教科としての制度設計の難しさが明らかになってきつつあります。現場の視点でいくと、特に次の2点に困難さを感じるのではないでしょうか。

 

(1)道徳科の教科の特質とされるものの現状と、それに基づいた制度設計上、内容項目や道徳的諸価値に分節した評価は許されていない。また、道徳的諸価値は、理解の対象でありながら、(ある種の)知識とは見なされていない。

(2)同じ理由から、道徳的判断、心情、実践意欲と態度についても、それら単体に焦点化した評価は許されていない。

 

これらの何が問題かと言えば、道徳科において授業のねらいと評価との一体化が、実際問題として不可能な状況だということです。

 

道徳科の授業の本時のねらいをみなさんはどのように記述なさるでしょうか?

おそらく「(A 本時の学習で扱う道徳的価値)について、(B 具体的な学習活動)を通して、(C 道徳的判断、心情、実践意欲と態度のいずれか)を育てる」という形が、教育課程の伝達講習等で指導され、一般化しているのではないかと思います。

一方で評価に関しては、上記の2点の制約がありますので、ねらいで示したAとCに関して評価の遡上にのせることはできないわけです。結局、それぞれの授業における評価に関しては、Bの学びの様相しか対象にできないわけです。現状の道徳科の授業と評価とが一体化していないとされる原因が、ここにあるわけです。

 

この状況が改善されるのは、次期学習指導要領の改訂を待たねばなりませんが、座して待つだけで状況が変わるとは考えにくいように思えます。なにより、道徳科が改訂された後で提言され、各教科の評価軸として規定された「資質・能力の三つの柱」に、次期改訂では道徳科も合わせることが求められるだろうと考えます。そこで、道徳科の評価軸を以下のように規定できるのではないかと考えました。

 

道徳科の評価軸 私案
【知識・技能】
道徳的諸価値に関する知識の更新の状況の見取り
【思考力・判断力・表現力】
教材に関わる学びで顕在化された諸様相の見取り
【学びに向かう力、人間性
自分との関わりで道徳的諸価値をとらえ、自らの生き方への考えを深めようとしている様相の見取り

 

当然、数値化しないことが前提です。そのうえで、授業で設定したねらいと評価そのものをストレートに繋げることができるかと思います。

もちろん、資質・能力の三つの柱に合わせるために、道徳科の制度設計そのものを改訂せねばならない部分もあるのですが、そのあたりは徐々に詰めていければと考えています。