教材研究のポイント③ 他の内容項目との関連を考える

 教材の中心をなす道徳的価値について、その内容項目を階層的にとらえて多様な思考を保障するのが、「多面的な見方」とするならば、他の内容項目やそこに含まれる道徳的諸価値との関連から多様な思考を保障するのが、「多角的な見方」だといえます。
この指標における最初のレベルは「関連しそうな道徳的諸価値が含まれる内容項目を想定する」ことです。

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価値関連図


 例えば、「個性の伸長」の学習を構想したとき、その生き方を支えていた思いについて考えを深めると、「自分のよさを伸ばす」や「短所を改める」といった内容項目自体に含まれる道徳的諸価値の視点で多面的に考える子がいることが想定されます。
 一方で、「希望と勇気、努力と強い意志」や「感謝」、「よりよく生きる喜び」など他の内容項目を窓口にして「個性の伸長」の根源にあるものを見出そうとする子もいます。これは、子どもたちが内容項目を多角的に見つめたことによるものです。

 本時の中心となる内容項目に対して、どのようにアプローチすれば自分らしい在り方として体現できるのかを考えるとき、その内容項目と他の道徳的諸価値と連関させれば、「こう考えれば自分の生活にも生かせそうだ」という行為の可能性がより広がることになります。結果として、実践意欲と態度も含めた道徳性の育成を促すことが期待できるのです。

 

 そのうえで、教材の提示する道徳的問題と、具体的にどう関連するかについて検討を重ねることがレベルアップのポイントです。ここでいう検討とは、道徳的諸価値の関連について、教材の独自性をふまえて分析することです。教材によっては、中心となる内容項目が同じであっても、関連する内容項目までが同じになるとは限らないのです。
例えば、「あこがれのアナウンサー」と「お魚大好き、さかなクン」で考えてみましょう。この2つの教材は、どちらも4年生で扱うように作成されており、中心となる内容項目も「個性の伸長」です。

 「あこがれのアナウンサー」の教材文を読むと、主人公の「個性の伸長」を支えていた思いが「希望と勇気、努力と強い意志」との関連することが明確に想定できます。一方、「お魚大好き、さかなクン」では、さかなクンの「個性の伸長」は「真理の探究」や「自然愛護」との関連が深いと考えられます。この違いは、教材が取り上げた事象や人物像のちがいによるものだといえます。


 このように、教材を中心において、道徳的諸価値の関連を把握することが、子どもたちを多角的な見方や考え方へと誘うために重要なのです。